落ち込んでしまう構造を『①知る』
先が見えない混沌とした今だからこそ、 “しなやかに適応するレジリエンス”がスタッフ育成に求められています。レジリエンス思考を身に付けるためにおさえておきたいポイントは、「①知る」「②許す」「③信頼する」の3つです。
まずは、人が落ち込んでしまう構造を「知る」必要があります。なぜなら、当たり前ですが理解できていないことは対処できないからです。落ち込む構造を理解して初めて対処できます。理解できていない状態では対処しようという思いにもなりませんし、対処できるとも思いもしないはずです。
たとえば、あなたが「新入社員が何回教えても同じ失敗をする」ことで毎日イライラしているのを職場ではグッとおさえて、帰宅後ホッとした途端に落ち込むといったことが繰り返されている。このような状況では、誰でも疲弊すると思いますが、あなたは、なぜ落ち込むのでしょうか?新入社員の覚えが悪いからでしょうか?新入社員が失敗を繰り返すからでしょうか?実は、新入社員が原因ではありません。新入社員の失敗によって、あなたが自分で自分に被せたイメージ(思い込み)によって落ち込むのです。つまり、何か出来事が起こったとき、あなたが他者からどう思われていると思い込んだのかなのです。
実は、人は他者から傷つけられることはありません。他者からの刺激によって落ち込むことはないのです。自分がどんなフィルター(価値観・イメージ)でどう捉えているのかを知ることから始めてください。
今後しばらくは、新型コロナウィルスと共存していく生活が続くと予測されます。コロナ禍のように、誰も経験したことのない不測の事態に対して、迅速な判断や柔軟な発想が必要とするときこそ、しなやかに再起するレジリエンスが必要なのです。
研修にご参加いただいた方から、「スタッフが変わる魔法はないんですか?」とご質問をお受けしたことがあります。「ダメなあの人が変わればいい!」という思いは、痛いほどわかります。ですが、あなたが何の関与もせずに職場の困ったスタッフが勝手にみるみる改善されていくなんて魔法はありません。私がお伝えしたいのは、あなたが悪いから変わりましょうと言っているわけではなく、困ったスタッフやご利用者との関わり方やコミュニケーションを変えましょうということです。変わる=進化・成長と考えて下さい。
本書を執筆している2020年は、誰も予測できなかった新型コロナ感染症が拡大しました。コロナ禍のような、誰も経験したことのない不測の事態に対して、臨機応変な対応や迅速な判断が、これからの介護現場で益々求められることは間違いありません。今いるスタッフにどう活躍してもらうのか、法人として何をしたらスタッフのモチベーションが保てるのか、先が見えない混沌とした今だからこそ求められる、主体性のあるスタッフを育成していくコーチングが必要なのです。
目の前にどんなことが起きたとしても、それを自分がどう受け止め、どんな風に学びにしていけるのか、それは自分でいかようにも変えられます。身の周りでおこる出来事は変えられません。ですが、捉え方(意味づけ)は変えられることができます。そのために、自分がどんな価値観・フィルターでどう捉えているのか、本書でご紹介しているトレーニングをご自分が実践してみてください。
本書をお読みいただいたあなたが、介護の仕事を通じて幸せになり、そしてあなたがスタッフと共に笑顔で成長し続けることを心より願っています。
落ち込んでしまう構造を『①知る』
身の周りでおこる出来事は変えられません。ですが、捉え方(意味づけ)は変えられることができます。そのために、自分がどんなフィルター(価値観・イメージ)でどう捉えているのかを知ることから始めてください。